
スコット・ジョプリン(1868~1917テキサス州出身)は、元奴隷の父親と庶子である母親の間に生まれた。
極貧の家庭で育ったスコットに、掃除婦などをしていた母親が「少しでも芸が身の助けになれば」とピアノを買い与えたことから、彼の音楽人生は始まる。
当時、黒人への教育は学校も制度も整っておらず、スコットは親戚や両親の知人や持つわずかな知識をもとに、独学でピアノの奏法と即興演奏を会得した。
やがて、ドイツ系移民のジュリアス・ウェイツが彼の才能に気づき、無償でヨーロッパ民謡やオペラなどのレッスンを与え、スコットの類まれなる才能が開花する。
1899年、スコットは『メイプル・リーフ・ラグ(Maple Leaf Rag)』を発表し、これがラグ・タイムとして初めてのヒット曲となった。
1900年代に入るといくつものヒット曲が連発され、来たる1902年、彼の代表曲である『エンターテイナー(The Entertainer)』が大ヒットし、スコットは「ラグ・タイム王」の称号を得る。
ちなみに、録音技術の完成されていない当時、ヒット曲とは楽譜の売れ行きを意味している。
こうしてアメリカ国民は、ルーツであるブルースよりも先にラグ・タイムを通して黒人音楽を知った。
それは、アメリカの大地を覆った“人種差別”という厚く重たい氷をほんの少し溶かし、黒人音楽を萌芽させる第一歩となったのだ。
そして1900年代、黒人音楽は長く厳しい冬を乗り越え、音楽史上に大輪の花を咲かせることになる。
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今回ご紹介するのは、スコット・ジョプリンの代表作であり、最大のヒット曲である『エンターテイナー』です。
この曲が、「ラグタイム」だとは知らずに聞いていた人も多いでしょう。
ロバート・レッドフォードやポール・ニューマンが出演した、1973年の映画『スティング』のエンディングテーマになり、オリジナルの発表から70年の時を経て、全米にラグタイム・リバイバルを巻き起こしました。
ピアノのみで演奏されるジョプリンのオリジナルより、もしかしたらこのサウンドトラックのほうが現在では有名かもしれません。
この曲が気に入ったら、ぜひ学校の吹奏楽部やサークルなどで演奏してみてください。
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そして今回は、同じ曲をピアノのみのバージョンでもお送りしましょう。
もともとスコット・ジョプリンはピアニストですので、こちらのほうがオリジナルに近い雰囲気が感じられると思います。
演奏はディック・ハイマンで、1975年の録音です。
ディック・ハイマンは1927年生まれ、ニューヨーク出身のジャズ・ピアニスト。
今年(2009年)82歳になった彼は、プロとして50年を超えるキャリアを持ち、100枚を超えるアルバムをリリースしたベテラン中のベテラン。
プラスチック製のLPレコードから流れる彼の音は、一つ一つの音をどれだけ大切に弾いているかが伝わってくるかのように、やさしく、暖かいです。
さあ、フルのバンド・バージョンとソロのピアノ・バージョン。
あなたは、どちらが好きですか?
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