2009年10月14日水曜日

1800年代末期 伝説の「ジャズの創始者」バディ・ボールデン

the Bolden Band

奴隷解放令から間もない1800年代末期、”コルネットを使った即興演奏”という意味で、「ジャズの創始者」とされる男がいた。
アメリカ音楽史上の伝説、バディ・ボールデンである。

バディ・ボールデン、本名チャールズ・ボールデン。
1877年9月6日生まれ(通説)、1931年11月4日死去。



上記のプロフィールはあくまで通説で、ボールデンの生年月日も職業も、正確な記録は見つかっていない。
さらに、楽譜も録音された演奏も残っておらず、知人や後続のミュージシャンの口伝と数枚の写真だけが彼を知る手がかりだ。

同じくニュー・オリンズ出身で、「ジャズの神様」と称されるルイ・アームストロングが、「子供の頃、ボールデンのやたらと馬鹿でかい音の演奏を聴いたことがある」と語っている。

ボールデンの音は「数ブロック先からでもわかる」といわれるほどに大きく、個性的で、即興でコルネットを吹きながら、パレードに飛び込んで行ったり、きれいな女性を追い回したりしていたらしい。

ボールデンはキング・ボールデンとも呼ばれ、ジャズ史上初めて王様と呼ばれた男でもある。
しかし、その華々しい称号とは裏腹に、彼もほかの黒人達と同様、差別と貧困の外に出ることはなかった。
生活苦から精神病に陥ったという説もあり、彼の死亡場所もルイジアナ州の精神病院となっている。

現在このジャズの創始者は、貧困層と無縁仏が多く埋葬されるホルト・セメタリーという墓地の、名もない墓標の下で静かに眠っているという。

♪ ♪ ♪

バディ・ボールデンは録音も映像も残されていないので、今回は「これぞニューオリンズ」という一曲をご紹介します。
とは言っても、もう皆さんご存知の曲でしょう。

『When the Saints Go Marching In (聖者の行進)』

ニューオリンズのテーマソングとも言うべき曲で、ニューオリンズを歩いていると一日一回は必ずこの曲を耳にします。

演奏はやはり、ミスター・ニューオリンズこと「ジャズの神様」ルイ・アームストロング。
彼はミューオリンズ国際空港、通称『ルイ・アームストロング空港』の名前になったり、ルイ・アームストロング公園に銅像が建っていたりと、高知県の坂本竜馬と同等か、それ以上に、市民に愛されています。

日本では、小学校の鼓笛隊や、マーチング・バンドでよく演奏されるこの曲。
実は、葬送行進曲なんです。

現在でもニューオリンズのお葬式では、棺桶を墓地まで運んだり、参列者が棺桶の中に花を添える時に、BGMとしてこの曲が演奏されます。

「え?こんな明るい曲が??」

と思うかもしれません。
でも、この曲のメロディのルーツをたどると、黒人霊歌に行き当たります。

奴隷制時代、黒人奴隷が死んでも、お葬式なんてできませんでした。
だからせめて、自分達の愛する黒人霊歌を歌い、仲間の冥福を祈ったのでしょう。

以前のブログでご紹介した『アメージング・グレイス』は、黒人白人を問わず、お葬式には欠かせない歌です。
でもニューオリンズの人々は、悲しみを悲しい音楽で演出はしないんですね。

「聖者が町にやってきて、一番いいやつをつれて行っちまった。あいつは今頃、天国で幸せに暮らしてるのさ。自分が奴隷だったことも忘れてね。」

なんて声が、聞こえてきそうです。

では、本場ニューオリンズの楽しさには遠く及びませんが、雰囲気のかけらだけでもお楽しみください。

ルイ・アームストロング
『when the Saints Go Marching In (聖者の行進)』

黒人、白人、ブラウン(黒人と白人のミックス)、アジア人が一緒のバンドです。

0 件のコメント:

コメントを投稿