2009年10月9日金曜日

1800年代~ ブルースの起源



19世紀初頭から中ごろにかけて、米国深南部(ミシシッピ、テネシー、アラバマ、ルイジアナ、ジョージアなどを含む地域)のプランテーションで働く黒人奴隷たちの間で歌われていたフィールド・ハラー(労働歌)が、ブルースの起源だ。

もちろんそれ以前にも(当然アフリカ時代から)黒人達の間に歌はあったのだが、シンコペーションのリズム、ブルーノート・スケール、4拍子で区切られる整った小節感覚などがそろい始めたのがこの頃であるといわれている。

また、黒人奴隷の間にキリスト教が普及し、一人が聖書の一遍を読み、皆がそれに呼応する「コール&レスポンス」も同じ頃に生まれた。
ゴスペルの基礎となる、黒人霊歌(スピリチュアル)の始まりである。
現代のゴスペルも、ソロシンガーが歌い聖歌隊がそれに答えるという「コール&レスポンス」のスタイルを受け継いでいる。

ブルースと黒人霊歌は、ほぼ同じ頃、同じ黒人奴隷たちの間で生まれ、互いに影響しあいながら発展してきた。
しかし、黒人霊歌はあくまで宗教音楽。
ブルースは、宗教とは基本的に関係のない労働歌(「母ちゃんのためならエンヤコーラ」のようなもの)である。

ブルースや黒人霊歌が生まれた頃、もちろんレコードなどの録音技術は存在しない。
しかも、楽譜どころか文字さえ書けない人たちが生み出した音楽であるから、『世界最初のブルース』は、曲も、歌詞も、記録すらも残されていない。

アフリカの記憶、アメリカの大地、そして歴史の爪跡。
世界最初のブルースを聞きたければ、それらを思い描きながら、想像の中でジューク・ジョイントするしかない。

♪ ♪ ♪

さて、アップした動画はNegro Prison Song(黒人収容所で歌われていた歌)の『Rosie』という歌です。
奴隷制時代からはるか時が過ぎた1947年の録音ですが、フィールド・ハラーの雰囲気が良く出ているのでこれを選びました。

ソロ・シンガーが歌い、周りがそれに呼応する『コール&レスポンス』が印象的で、後ろでリズムを刻んでいる音は、斧で木を切る音です。

ロージーという名の女の人に捧げる愛の歌で、

『 結婚しよう。
 君の手には幸せが握られてるんだよ。
 結婚しよう。
 約束じゃないか、いつか自由になったらって。』

という意味の歌詞が歌われています。