2009年10月17日土曜日

1900年前後 ブルースからラグタイムへ


悠久の流れが、そのままアメリカ音楽の歴史となった河、ミシシッピ・リバー。
時の流れが人の流れを作り、河の流れは音楽の流れとなった。

米国深南部からシカゴへと向かう道のりの途中、ミシシッピ河中流に広がるミズーリ地方で、ブルースはクラシック音楽と出会い、ラグタイムとなった。

ラグタイムは、19世紀末ミズーリ地方に住む黒人達が生み出したピアノ演奏様式。
シンコペーションのリズムとブルースを基本としたメロディが特徴で、ニューオリンズとは違う方向からジャズへと発展した源流のひとつである。

リズムと和音を構成する左手の規則的な演奏に、旋律を主とした右手の演奏が強い裏のリズムにのることから、タイム(time)が遅れた(ragged)感じに聞こえることで、ラグド・タイム(ragged-time)略してラグタイム( ragtime)と呼ばれた。

ラグタイムが生まれた時点では、まだブルースの楽譜は(もちろんレコーディングも)存在していない。
まだ記憶と感性の中にのみ存在していたブルースが、クラシックの教養を身につけた黒人演奏家によって導き出されたのが、ラグタイムだ。

同じくブルースから派生し、同じくジャズの源流となった、感性と即興が主軸を成すニューオリンズ・ジャズに対し、ラグタイムに即興は無く、教養に裏づけされた理論と構成が見られる。

ラグタイムの創始者達が子供の頃、黒人には教育の機会が与えられていなかった。
彼らのほとんどが独学で音楽の知識や、ピアノの技術を身につけている。

自らを教育し、自らを鍛錬し、黒人達がどん底から這い上がるために踏み出した第一歩、それが、このラグタイムだったのかもしれない。


♪ ♪ ♪

今回アップした動画は、「ラグタイム王」スコット・ジョプリンが、1899年に発表した『メイプル・リーフ・ラグ』です。
この曲により、ラグ・タイムという音楽のジャンルが世に認知されました。

演奏している陽気なおじさんは、ロッド・ミラーさん。
この人は別に、「歴史的な人」とか、「偉大なミュージシャン」ではありません。
カリフォルニアの「ディズニーランド」で、ピアノを弾いている人です。

ただ、驚異の速弾きと、それでいてとても軽いタッチの音使いがとても印象に残ったので、この人の動画を選びました。

確かに、ラグタイムの軽快なサウンドと、ディズニーランドの雰囲気はよく合います。

19世紀末、元奴隷やその子供達が生み出した音楽が、今では夢の国で演奏されていることを思うと、「世界は、悪いほうにばかり向かってるわけじゃないなあ」と、ちょっとだけ思います。

このロッドおじさんには、今でも、カリフォルニアのディズニーランドに行けば会えます

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