2009年10月13日火曜日

1800年代後期 ブルースからジャズへ



シカゴとは逆方向に、ミシシッピ河を南へ下る黒人達がいた。

世界第四の大河、米国を南北に貫くミシシッピ河。
その河口の町では、港湾労働や軍事産業など、良い働き口があると黒人達の間で噂されていたのだ。

彼らが目指したのは、スペインやフランス統治時代の面影と、西欧と米国南部の文化が融合された「ケイジャン/クレオール文化」を残す美しい町、ルイジアナ州ニューオリンズ。

奴隷解放後も、ニューオリンズでは強烈な人種差別が存続していた。
黒人の音楽活動も厳しく制限され、週にたった一度の日曜日、町でたった一箇所コンゴ・スクエア(現在のルイ・アームストロング公園の一角)という場所でのみ、音楽活動が許されていた。

(現在のコンゴ・スクエアへは、まず行かないほうが無難。ただでさえ治安の悪い地域にあるうえに、2005年のハリケーン"カトリーナ”による大洪水の影響がいまだに残り、治安の悪さに拍車がかかっている。)

音楽的教養のない黒人達がかもし出す音は、まさに魂の叫びだった。
極度の貧困にあえぐ黒人達が持ち寄る楽器は、彼らが命以外に持ちえた唯一の財産だった。
そして彼らは、仲間たちと出会い、即興演奏の中で音を共有する喜びを知った。

「ジャム・セッション」の始まりだ。

ブルースの旋律、西欧の楽器、そして奴隷制250年の間、黒人の遺伝子の中で眠っていたアフリカのリズム。

この3つが出会い、ジャズが生まれた。

♪ ♪ ♪


今回アップした動画は、現在のコンゴ・スクエアの様子です。
2005年の大洪水の直後と比べると、かなり復興が進んでいます。

「ジャズ生誕の地」コンゴ・スクエアでは、毎年秋に『コンゴ・スクエア・リズム・フェスティバル』が開かれます。

同じニューオリンズのお祭りでも、全米最大級のお祭り『マルディグラ』や、音楽の祭典『ジャズ&ヘリテイジ・フェスティバル』と違い、『コンゴ・スクエア・フェスト』は規模も小さく、黒人の歴史的伝統を前面に押し出したお祭りです。

2007年スタートとまだ歴史の浅いお祭りですが、そのぶん商業化されていない「黒人臭さ」、または「アフリカ臭さ」が感じられます。
動画で演奏されているのも、アフリカの太鼓(ジャンベが中心)を使ったアフリカのリズム。
このリズムとブルースが出会い、ジャズが生まれたんですね。

いっけん、ただの16ビートに聞こえるこのリズム。
しかしこの中には、シンコペーションや、スイングのリズムが隠れた形で満載されてます。
それらを聞き取ることができれば、ジャズ・リズム感アリかもしれません。

ニュー・オリンズは、言わずと知れたジャズの都。
古き良きニューオリンズ・ジャズやディキシーランド・ジャズが、今でも街中に溢れています。

しかも、ジャンボ生ガキやケイジャン・フードなど、ニューオリンズは全米で一番「おいしい」町。

2005年の大洪水のせいで街中が破壊され、一時は観光客どころか、住民すらもこの町を見捨てました。
しかし、ニューオリンズの町や音楽を愛する人々が再びこの町に集まりだし、徐々に復興が進んでいます。

多くの産業が破壊されてしまった現在、観光収入が一番ニュー・オリンズの助けになると、関係者は語ります。

しかし、以前に比べると、はるかに治安が悪化してしまったのは事実です。

というわけで、、どうしてもニューオリンズに行きたいという人には、次のような方法があります。

マルディグラやジャズ・フェスティバルなど、お祭りシーズンに行く。
街中人で溢れてますし、警察も大量に出てます。

観光と文化の中心地フレンチ・クオーターに的を絞る。
フレンチ・クオーター内の治安は、以前と同じくらい良くなってます。

ニューオリンズに詳しい人と一緒に行く。
やはり、「知らない」というのが一番危険ですからね。
でも、「知ってるつもり」は禁物。
1度や2度行ったことあるくらいが、一番危ないかも。

では、「ジャズの聖地」「ジャズ誕生の町」「アメリカ音楽のふるさと」「アメリカで一番楽しい町」「アメリカで一番おいしい町」などといわれるニューオリンズの町と音楽を、どうぞ満喫してきてください。

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