2009年10月12日月曜日

1865年~ 河の流れ 人の流れ ブルースの流れ


1865年に南北戦争が終結すると、奴隷制は憲法により禁止され、黒人奴隷たちは解放された。
250年にわたる米国最大の負の歴史が終わりを告げ、新しい時代が夜明けを迎えたのだ。

解放された黒人達は、奴隷制の中心地であった深南部を抜け出し、比較的自由で差別の少ない北部の街々へと移り住んだ。
特に、ミシシッピ河で深南部と直接つながる中西部の大都市、イリノイ州シカゴの街へは、より良い職と暮らしを求めて大量の黒人が移り住んだ。

ブルースもそんな流れと共にシカゴへと運ばれ、かの地で洗練され、成長し、やがてラジオの電波に乗って全米、そして世界へと配信されていった。
それが、シカゴが「ブルースの世界首都」と呼ばれるゆえんだ。

こうしてブルースは、人の流れと共に徐々に全米へと広がっていった。
マーク・トウェインの名作『トム・ソーヤーの冒険』で、トムとハックが筏に乗ってミシシッピ河を旅した時代の、ほんの少しあとの話である。

ミシシッピ河を遡る蒸気船の上、大陸を横断するキャラバンの中、自由を勝ち得た人々の口には、喜びのブルースが口ずさまれていたことだろう。
ブルースの歴史とは、アフリカ系アメリカ人(黒人)の自由の歴史なのだ。

これが、ブルースに「自由」という言葉が欠かせない理由である。

♪ ♪ ♪

マーク・トゥエインの著書『トム・ソーヤーの冒険』と『ハックルベリー・フィンの冒険』は、恐らく世界で一番人気のあるアメリカ文学ではないでしょうか。

著者のマーク・トゥエインは、ミズーリ州ハンニバルというミシシッピ川中流の小さな町出身。
トム・ソーヤーも、ハックルベリー・フィンも、この町を舞台に描かれており、町のいたるところにトムやハックにまつわる逸話があります。

さて、ここでは『ハックルベリー・フィンの冒険』をご紹介します。

『ハックルベリー・フィンの冒険』は1884年の出版で、奴隷解放令のちょっと後ですが、物語の年代設定は奴隷解放令の前、南北戦争のさなかになっています。

主人公のハックはプア・ホワイト(貧乏な白人)の出身で、町でも有名な腕白坊主です。
父親はひどいアル中で、ハックに暴力を振るいます。

そんなある日、ハックは「自分は死んだ」と父親に思わせ、家も町も捨てて逃げ出します。

同じ頃、親友トムの家の奴隷のジムが、自由を求めて逃亡を企ていました。
ハックは、逃亡奴隷として追われの身になったジムを助けながら、筏に乗って一緒にミシシッピ河を旅するのです。

旅の途中、二人は戦争に巻きこまれたり、ジムが「ハック殺害容疑」で捕まったりと、様々な困難に襲われます。
しかし、困難はハックとジムの間に、深い友情を芽生えさせるのでした。
白人少年と、黒人奴隷の友情。
しかし、時代はまだ二人の友情を許しません…

『ハックルベリーの冒険』は、単に物語としての面白さだけでなく、当時の社会背景や人々の思考法を知るうえでも、とても優れた作品です。

でも、活字はちょっと苦手…という方には、映画もおススメ。

主役は、ロード・オブ・ザ・リングス(指輪物語)フロド役のエリジャー・ウッド。
幼き日の彼は、すでに大物俳優の片鱗を見せています。

ディズニー映画なので、映像がとてもきれいです。
ミシシッピ河の広大な風景、奴隷達が働いていた南部のプランテーション、南北戦争、貧富の差など、歴史的要素が効果的に描き出されています。

下に予告編だけアップしておきますので、興味のある方は見てみてくださいね。
当時の黒人奴隷達の気持ちが、ちょっとだけわかるかもしれません。